月しぐれ

一年の内であまり好きでない時季がある。
11月の終わり頃から12月の初旬にかけての時季だ。
それというのも年賀の挨拶の欠礼を詫びてくる葉書が届けられるからだ。
旧い知人や仕事の関係で知り合った人の喪をその子息などからの便りで知ると寂しくなる。
今年は既に幾枚もの葉書が手元の文箱に入っているのだ。

気分転換も兼ねていつもより遅い散歩に出る。
十三夜の月が東の空に出ている。

雲が風に流されて来ると細かい雨が顔を打つ、月時雨だ。
そういえば今日は天気のころころ変わる一日だった。
朝のしぐれでは虹を見、日中には激しいしぐれがあり、またあかあかとした日照雨もあった。

対岸の長命寺山の夕景が瞬時明るくなることもあった。

月しぐれの中を傘もささずに散歩していたが月しぐれもほんの僅かな時間だった。
雲が広がり冷たい大粒の雨になる。大急ぎで引き返す羽目になった。

ともがらの訃報聞きおり月しぐれ        風来坊