陽の出前にフィールドへ出掛けるつもりで早起きしたが、もたもたしていて現地へ到着したのが午前7時過ぎ、いつものオオヨシキリの賑やかな啼声が全く無いのだ。それに荒起こしのまま田植えされていない田圃でいつも餌探ししているカワラヒワの姿も見受けられないのだ。ケリの姿もない。キジの甲高い啼声も聞こえてこないのだ。出遅れたかそんな思いで畦道を歩いていてやっと目的のキジを見つける。
Dブロックと名付けているフィールドの最も遠い西の端にいた。コヤツを目当てに草道を掻き分けていた時、予想だにしなかった場所にキジの夫婦連れがいるのを見つけた。
カメラを構えた人がいるのも承知の上で夫婦はのんびりと餌探しをしている。
しばらくしてから夫婦連れは草むらに姿を隠した。
持参のコーヒーを飲みながら再び姿を現すのを待つ。木陰でもあればいいのだが木陰一つない田圃道、老爺には夏日を思わせる陽の光が厳しかった。
虫撮りを専らにしていた頃は「待つ」ということが苦痛だったが、鳥撮りを始めてからこの苦痛も少しづつだが軽くなっている。待ったことが幸いした、待望のシーンがほんの一瞬だが見られたのだ。
まずオスが草むらから貌を出し次いでメスが現れゆっくり歩き始めた。
オスは田圃の土手に上がると甲高い啼声と母衣打ちを見せてくれる。
この後、次の舞台は向かいの田圃の土手と言わんばかりに農道を横切っていく。
そして一段高い畦道の一角に立ちメスがやって来るのを待っている風情だった。
近接してカメラを構えていると用心深いメスが農道を渡りづらいだろうと思い、三脚を担いで30mほど後退する。
メスもオスの後を追いかけそうなのだが、農道を渡る踏ん切りがつかないのか、行ったり来たりしている。随分長い間メスはそんな行動を続けていた。
かなりの時間の後オスはメスの方へと動き出し、夫婦連れは最初に出てきた草むらに入っていった。
メスが貌を出した草むらに雛がいた。
草むらの中に雛は3羽いるようだが然とは確認できない。
キジの一家全員が勢揃いしているシーンが欲しくて小一時間粘ったが思いは叶わずだった。こんなことをカミサンに話しているとカミサン曰く「叶わないものがあるということは幸いですよ。叶えられるまで出掛けられるんですから」
老爺に残された時間は少ないのだ、いつ叶えられるだろうか。
本日好日、明日も好日だろうか。