時空を超えて

先日、安土城考古博物館の「造形衝動の一万年」展で見た澤田真一さんの作品と縄文土偶との関わりが、それ以来ずっと気になっている。



それというのも、澤田真一さんの作品の三本指と山梨県・鋳物師屋遺跡から出土した土偶の三本指の類似性に、時空を超えて繋がる魂の淵源を見たように思ったからだ。

「三本指」・・・。大島直行著「月と蛇と縄文人」を読んでいなければこの三本指のことを、あまり気にも留めなかったであろうが、次のような一節を読んでいただけに気になったのだ。
少し長くなるが引用する。

”三 ”が陰暦では重要な数であることは承知されている。月が死んで他界に宿る三日間というのが決定的であったにちがいない。この三日間をすぎてから、月は再生と若返りを果たしたのちに、ふたたび闇から出現する。三本指の手は、三日間の闇夜を表すと思われ、その後に新月が新たな生に向けて姿を現す。
それは、旧世界や環太平洋地域および先コロンブス期のアメリカのあらゆる場所でみられる象徴である。

古代縄文人の魂とアール・ブリュットとして結晶させた澤田真一さんの魂は何千年という時を超えて繋がっているのだ。
澤田さんの作品を見ていて不思議な感動を覚えるのも、我々がとっくの昔に忘れてしまっている縄文人のこころの風景を見せてくれるからだろう。

三本指の土偶から「三日間の闇夜」や「再生」という呪術性や宗教性、こころの働き(精神世界)を読み解く、仮説を立てる、これが学問の面白さ、想像の楽しさなのだろう。

時空を超えた想像の世界を暫くは楽しめそうだ。