紅白の饅頭

シルクロード仏教史料を読む ー「法顕伝」講読ー”第3講目、山田明爾先生の話が一段と面白くなってくるのに、今日はうっかりと補聴器を忘れていた。
補聴器を忘れていることに早く気付いていれば最前列の席に座っただろうに、いつもの後ろの席だったから必死で聴いていた。
「法顕伝」19行ばかりを一講時をかけて読む、その詳しい解説が何とも言えず面白いのだ。

沙河中多有悪鬼熱風。遇即皆死無一全者。上無飛鳥下無走獣。遍望極目欲求度處、即莫知所擬。唯以死人枯骨為標幟耳。 
タクラマカン砂漠(沙河)を渡る時の光景を描写したこの箇所は、何度も何度も読み返したくなる一節なのだ。
帰りの車の中でうろ覚えのこの箇所を小声に出して反芻を試みる。
しかし、思い出せたのは「沙河中多く悪鬼熱風有り.....上に飛ぶ鳥無く下に走獣なし.....唯死人の枯骨を以って標幟と為すのみ」この文言だけだった。

帰ってみると元いた会社から紅白の饅頭が届けられていた。

創立記念日の祝の饅頭なのだ、リタイアして10年が過ぎようとしているのに毎年届けてくれる。
嬉しくなる。
この紅白の饅頭にはいろんな思いでが詰まっているが、年経るごとに少しづつ減少してゆくようだ、思い出せる顔も少なくなっている。
重責を担っている人の顔を思い出しては、今期の業績は如何ばかりかと尋ねたくなっていた。

紅白の饅頭と法顕伝、好日だった。