カタツムリ

2ヶ月に一度の定期健診の帰りには、駐車場のフェンス越しに雑木林を眺めるのが習いになっている。フェンスの向こうにはアベマキやクヌギ、柏、山桜などの雑木林が広がっているのだ。
フェンスを乗り越えることは出来ないが、潜り込めるだけの破れ目を見付けている。
雑木林で何かを見つければフェンスの破れ目を持ち上げて潜り込むつもりなのだ。

今日は雑木林の樹々に虫の姿を見つけ出すことは出来なかった。
見つけたのは駐車場の端に立つ電柱にいたカタツムリ・殻の傷ついたクチベニマイマイのみ。

ファインダー越しにカタツムリを見ていて、舞え舞え 蝸牛 という今様を思い出す。
この今様がどんな節回しで歌われているのか知らないのを幸いに、自分勝手な抑揚をつけ小声で口ずさんでいた。
舞え舞え 蝸牛 舞わぬものならば 馬の子や牛の子に蹴えさせてん 踏み破らせてん
真に美しく舞うたなら華の園まで遊ばせてん

あの蝸牛はきっと舞わなかったんだろうな、車を運転しながらも今様を口ずさんでは傷ついた蝸牛のことをいろいろ想像していた。

午後から、第40回 大津市写真展覧会を観に行く。
213点の作品が出陳されていた。
老いとともに年々感受性が劣化しているのだ、立ち止まってしばらく見入っていた作品は数点しか無かった。
出陳目録にお気に入りをマークしてあるが、今も鮮明にイメージ出来るのは「印象・ベンチ」(準特選)井上三央さんの作品のみ。
この作品はいろんな想像を掻き立てるものを内に秘めている、そんな思いもあって観覧者の少ないことを幸いに作品の前でしばし佇んでいた。

明日は虫撮り日和のようだ、トンボ撮りに行くか。