雑踏の中で(2)

会社のOB会懇親会があり半年ぶりに大阪に出掛けた。
キャノンとニコンのギャラリースペースを覗いた後、目的の会場に向かって御堂筋を歩いたが、5時半過ぎの退社時刻とぶつかった所為で酷い目に遭った。
駅に向かう群衆と逆方向への歩きだ。用心しながら歩道の端っこを歩いていても何度も肩を突き飛ばされそうになった。それに押し寄せてくるという感じの人混みは誰もが無表情に見え、無機質な物体の行進のようにも見えて、恐怖に近い寒さを感じていた。

リタイアして琵琶湖畔に引っ込んでから9年、時折の旅行や月に何度かの京都行以外は本当の田舎暮らしだったから、9年という時間は雑踏の喧騒さや襲いかかって来るような人の群れに
対する免疫力を体から削ぎ落としていたのだ。
昼間の繁華街の雑踏と違って家路を急ぐ人たちの足早な雑踏には気味悪ささえ感じていた。

雑木林に一人潜りこんで虫撮りに夢中になっている、そんな一人ぽっちの時間に染まってしまっているとぶっかるように歩いてくる人の群れは恐ろしいものだ。
人混み嫌いは歳の所為ばかりでない。一人でいる時間の方が多くなり、一人ぽっちでいる方が好きになってしまったからだ。
リタイアするまでは孤独な方がいいなんて思うことはこれっぽっちもなかったのに、この変化は一体なんだろうか。


いつものように料理が美味かったから滅入った気持ちも救われていた。
これが気に入らない料理だったら落ち込みが酷かっただろうと思う。


出された料理の中でも、若筍とフキとわかめの煮物、甘鯛の塩焼き、絶妙の塩加減だった。