キジに翻弄されて

田圃の荒起しも一段落したようで、見渡す限りの野面に農作業をする人は見当たらない。
かなり強い東からの風が吹いているが昨日のような冷たさはなく、気持ちいい程だ。

背の高い枯れ草の叢越しにキジが歩いているのを見付け、屈み込むようにして近づく。

最初はトコトコと歩いていたが気配を感じたのだろう、急に足早になり農道から畦道に入り、畦道の下の草に覆われた側溝に姿を隠した。

側溝の先にちらりと姿を見せたのは少し時間が経ってから。キジは再び身を沈める。
キジはなかなか姿を現さないのだ、待ち時間のことを考え三脚を据えた。

20分近くも待っただろうか、次に現われたのは田圃一枚分先の田の畦、かなり距離がある。
この個体間距離に安心したのだろうか、じっと動かずにこちらを見ている。

少し間合いを詰めるつもりで三脚を持ち上げる、キジはこちらの動きに敏感に反応するように草叢に姿を隠した。

この後二度キジの啼き声を聞く。
最初のケーンケーンという啼き声はすぐ近くの草叢から、ちらりと姿を見せた。
二度めは以外にも遠い耕作放棄地、Cエリアと名付けている場所、キジは翔ぶことは滅多にないが走るのは相当に速いのだ、移動していったのだろう。
啼き声を目当てに田圃道を横切り、畦道に三脚を据える、ファインダーを覗く間もなしキジは枯れ草の中に素早く姿を隠した。
啼き声の感じから母衣打ちを期待していたのだが、今日のキジは無愛想だった。