老いのかたち(33)

スーパーの野菜売り場でタラの芽が並んでいるのを見掛け、タラの芽が芽吹く頃にタラの木にやって来るヒメシロコブゾウムシのことを思い出した。
こんなこともあって買い物から帰った後、ITOUさんの菜園へ行く。
菜園の斜面にある10本ほどのタラの木の芽吹きは未だ固く、一本だけが外皮を破っていた。

ヒメシロコブゾウムシの姿も見掛けずだった、一週間ほど早いのだろう。

雛壇状の住宅地にあるITOUさんの菜園には6段の石段がある、いつもはトントンと出入りするのだが、今日は180mmマクロを装着したカメラを抱えていたこともあってか、少しだけ高くなっている最後の1段から道路に降りる時よっこらしょと呟いていた。
そんな一言を漏らしたことが老いの身の理とは言え痛いほど寂しかった。
「よっこらしょ」とか「どっこいしょ」という呟きが最近とみによく出るようになった。

「老いのかたち」のことをいろいろ考えていて、佐藤愛子さんのエッセイ「九十歳。何がめでたい」を電子書籍としてダウンロードしていることを思い出し、読み直すことにする。
Kindle版の電子書籍としてダウンロードしcloudに保存しているものが186冊あった。
紙の本はかさばることもあって電子書籍で入手出来るものは極力Kindle版で購入しているが、何かを思い出しパラパラとページをめくって必要事項を探し出すには電子書籍は結構厄介だ、やはり老躯には紙の本の方が好ましい。

 佐藤愛子著「九十歳。何がめでたい」小学館 ポツポツ読むことにする。