麦の秋

県道47号線を走っていて棚田のあちこちに点在する麦畑を見つけ、車を農道に乗り入れた。
麦穂の色がなんとも明るくて気持ちがいいのだ。
棚田の最上段まで歩いていけば、水の入った田んぼと麦畑がパッチワークを作っていて面白い絵になっているに違いない、そんな光景を想像していたが、棚田の高みに行くには坂道を30分近くは歩かなければならないのだ。
麦秋の昼下がり、目的の場所はあまりにも遠く感じられ、二の足を踏んでいた。

麦穂に触れてみたくなり獣除けの電気柵を乗り越えて麦畑に入る。

麦の秋、麦穂、麦畑、いろんな風景を思い出すがいずれも半世紀以上も前の光景。
麦秋と結びつく顔も今では5指に足らずになっている。

帰り道、シオヤトンボが獲物を捕まえているのを見た。