猿が来る

散歩の折、小さな谷間の畑で老爺が里芋の収穫しているのを見つけ声をかけた。
畑仕事をしているところをこれまで何度も見掛けていたが、声をかけたのは今回が初めてだ。
お互い耳が遠いこともあり半ば頓珍漢なやりとりだったが、暫くの間、老爺の話に耳を傾けていた。

老爺の話の中に猿の話があった。
丹精込めて作っていたトマトが猿に喰われてしまったこと、サツマイモも喰われたこと、サヤエンドウの皮を上手に割って美味い実だけを食っていること等など、問いかけたわけでは無かったが手振りを交えて話してくれた。
イノシシや鹿は此処までは降りてこないが猿は時折家族連れで来るとのことだった。

昨日の朽木行きでも猿が柿の実を食い荒らしている痕を見た。

猿害の痕を二ヶ所で見た。
一ヶ所では柿の木一本まるごと食い荒らしたという感じで、半分だけ齧った無数の柿の実が木の周り一面に散らばっていた。
一面に散らばっている柿の実の中には比較的に新しい実も落ちていた。
柿の実を喰いに猿は何度も来ているようだった。

猿が齧り残した大きくて新しい実の一つをナイフで切り取って味見した。
まだ固い実だったが甘い実だった。
これを半分以上残しているのだ、なんという贅沢な食い方だろうか。

柿の実を喰っている野猿を撮ってみたい、老爺と別れた後そんなことを考えていた。