ギンヤンマの死

五感劣化、このことを最近しばしば感じる。
眼や耳、足腰が老化していることは自覚していたが、今朝は嗅覚が劣化していることに気付く。
「ああ、いい香り、キンモクセイが満開ね」カミサンは窓を開けながら呟いているが、私には全くその甘い香りが感じられないのだ。
早朝の冷気の中を漂って来るキンモクセイの香りを、これまでは少し離れた書斎からでも嗅ぐことが出来たのに。
キンモクセイの匂いを確認するため、外に出て至近距離まで近づき深呼吸をする、確かにいい香りだ。
五感劣化、加齢とともに劣化は何処まで進むのだろうか。

夕方の散歩の折路傍でギンヤンマの死を見る。
稲田の上や近くの小川を縄張りにして、このギンヤンマは一夏飛び廻っていただろう。
それが今では地上に横たわっているのだ。
あの素早い飛翔をもう見ることは出来ない。

キンモクセイの香りを嗅ぎ取れなかった時の心象風景のように思え、暫く眺めていた。


ギンヤンマの死、これはトンボの季節がもう終わりに近づいていることを告げているのだ。
アカトンボの連結飛翔も打水産卵も今季は撮ることが出来なかった。
それだけ体力が衰え行動範囲が狭くなっている証拠だ。寂しくなる。