麦の熟れる頃

湖岸道路を走っていて黄色く麦が熟れているのを見付け車を停めた。

麦秋、麦畑、麦の熟れる頃、こんな一連の言葉から脳裏に浮かんでくる光景がある。

それは、低い丘陵に造られた急峻の麦畑であり、明るい褐色に輝く麦畑であり、風に波打つ麦畑と丘の上の青空だ。
それに何よりもそこには幼い弟妹をはじめとする家族全員の顔、刈り取った麦を丘の下の脱穀場所まで運び下ろす汗まみれの顔があった。

この光景を捨ててから半世紀以上が過ぎている。
オヤジが亡くなると同時に畑は処分した。
コンバインなどの機械化を受け付けない急峻な畑だったから、今ではどんなふうに変貌しているのだろうか。雑木林になっているのだろうか。


シロダモの木やその下のタカサゴユリテントウムシが羽化し始めている。
見る限り二紋型ばかりだ。

  老いてなお 虫撮りしおり 麦の秋     風来坊