クツワムシ

涼しくなり始めるといろんな虫の啼き声が聞こえてくるようになった。
それも種類が増えているように感じられるのだ。

夕食後玄関先に出た時、ギジジッ、ギジジッ、ギジジッ、ジジッ、ジジッという虫の声を聞き、急いで懐中電灯とカメラを持ちだした。
玄関先のアオキから啼き声が聞こえてくるのだ。
葉陰に褐色のクツワムシがいた。

ギジジッ、ギジジッ、ギジジッ、ギジジッと啼いていたから、その虫がクツワムシだとは思ってもいなかった。
クツワムシはガチャガチャガチャガチャと鳴くものだとばかり思い込んでいたからだ。
子供の頃歌っていた唱歌「虫のこえ」の影響だろう。既成概念だ。

しかし、目の前にいる虫はクツワムシと思えるし、啼き声はガチャガチャガチャガチャではなく、上手く言葉では表現できないが、ギジジッ、ギジジッ、ギジジッ、ギジジッ、ジジッ、ジジッと聞こえてくるのだ。
老兵の耳は補聴器が必要なまでに劣化している、そんな老いた聴力の所為でギジジッ、ギジジッ、と聞こえるのだろうか。

聞こえてくる音を言葉として口に出し再現する難しさ、それ以上に聞いたままを文字で表現しようとするのは並大抵ではない。

詩人だったらこの啼き声をどんなふうに文字にするのだろうか。
どんなオノマトペを紡ぎだすのだろうか。

オノマトペという言葉に行き当たったら、 蛙 草野心平 詩誌「歴程」こんな一連のことを思い出していた。ただひとつらなりの関係として記憶している受験勉強時代のものだ。