コスカシバ

早朝の散歩の折オニユリの群落を覗いていて、茂みの奥の葉の上にコスカシバがいるのを見付けた。

コイツが幼虫の頃は梅や桃、スモモ等の果樹類の幹を食害する、果樹農家の嫌われ者だ。

桜の木もコイツに食害される。

果樹類は防除がきちんと行われるからそんなに大きな被害も生まないようだが、公園や街路樹の桜は計画的な防除がなされないため、時には大きな被害を受けることもあるようだ。
Cherry borer(桜の木に穴を開ける者)と英語名も持つなど、桜の大敵・桜の穿孔性害虫なのだ。

桜の木の樹皮の傷ついた所や荒れたところを好んで産卵場所にするため、昼間活発に活動すると言われているが、これまで見たことがない。
コイツの仲間のオオスカシバやホシホウジャクはよく見かけるのに。
オオスカシバやホシホウジャクのホバリングを撮ったものを何点か持っている。

コスカシバの羽化期は5〜10月と長期にわたるのだ。
散歩の道筋には桜並木もある気をつけて見なければなるまい。


コスカシバと同定してしまったが、同じ仲間のヒメコスカシバとの区別がついていないのではと、ここまで書いてきて気になりだした。
急いでWebの図鑑で調べ直してみたがそれでも判別できないでいる。

ヒメコスカシバにはある思い出があるのだ。
何年か前の冬2度ほど深清水の柿畑(高島市今津)へ、イラガの卵を探しに行ったことがある。
その折、老夫婦が二人して柿の木に高圧の水を吹きつけて粗皮を削り飛ばしている光景を見たのだ。

初めて見る作業だったので暫く見ていた。
作業が一段落した時声を掛けてみた、何故そんな作業をしているのか知りたかったのだ。

ヒメコスカシバというガの幼虫が柿の樹皮の下に潜り込んでいて越冬しながら柿の木を害する。
そこで、柿の木の発芽前に粗皮を高圧水で吹き飛ばすことで防除し、薬剤散布の効果を高める。
この作業も適切な時期がありそれを逸すると効果が薄れる、等など親切に教えてくれた。

作業が再開された時写真を撮ってもいいかとお願いしたが老爺は手を振り拒否の素振り。
媼は申し訳なさそうに微笑んで頭を下げてくれた。
この時の媼の何とも言えぬ笑顔が印象に残っているのだ。
深清水の柿畑へは折りにふれ出掛けているがあの時の老夫婦を見かけたことがない。
今もご健在だろうか。