ハエトリグモのミイラ

車庫のシャッターを開けようとしてハエトリグモがいるのを見つける。
おっ!という思いでシャッターの上昇を止め静かに元の位置に戻してから、ポケットにいつも忍ばせているコンデジ(XZ-1)を急いで取り出す。
越冬するハエトリグモもいるとは聞いていたが、真冬のハエトリグモなど見るのは初めてだ。

冬のハエトリグモを見付けたことでワクワクしながら撮っていた。
クモの様子が少しおかしい事に気付く、動きがほとんど無いのだ。
夏場だったらあれほど敏捷に動くハエトリグモもこの寒さ故に動きも鈍いのだろう、そんな推測をしながら撮っていた。
何枚か撮った後、映像の確認のためにモニターを拡大してみて、ハエトリグモは既に死んでいることが判明した。
ハエトリグモが美しくミイラ化してシャッターにくっついていたのだ。


このミイラ化したハエトリグモはマミジロハエトリのように見える。
昨年の夏場には、庭の柚子の葉の上や茗荷の葉先でコイツのポートレイトを狙っていたが、敏捷さ故にまともには撮らせてくれなかった、ニクイ奴なのだ。
まん丸い四個の眼を超アップで撮りたい、そんな願いはいつ叶えられるだろうか。
ミイラ化したクモを眺めながら思いは夏に飛んでいる。

このミイラ化したハエトリグモは記念のために持ち帰った。
ちいさな子供が道端で見付けたものを宝物のように持ち帰るように、書棚の中のシャーレにはいろんな虫達が入っている、他人にはゴミの集まりに見えるだろうが、それぞれが思い出の塊なのだ。しかし、そう遠くない時期に自分の手でこれらを処分しなければなるまい。