飛べないクロアゲハ

早朝の散歩道でクロアゲハを見る。
背の低い草叢の上に翅を拡げて止まっているのだ。
驚かさないように静かに間合いを詰める。1メートル近くまで近づいても飛び立たないのだ。
吸蜜に夢中になっている時は至近距離まで接近しても逃げないこともあるが、休息している場合などでは敏感に反応して近づくことを許してはくれない。

最短距離まで近づいた時クロアゲハは飛び立ったがあの優雅な飛翔ではなく、パタパタと翅を振るわせ、まるで歩くような感じで僅かな距離を前に進む。

翅がボロボロなのだ。
草叢から路傍に出たアゲハの後を追いかけていたが、追いかけること自体が余計に翅を傷つけるように思い途中で止めた。
ここまで傷んでしまうともう飛ぶことは出来ないのだ。

ボロボロのクロアゲハを見ていると一夏の挽歌が聞こえるようで寂しくなっていた。
お前さんの夏も終わりですね。